外出がつらい。


僕は通院と散髪とコンビニのためにのみ外出する程度の半ひきこもりだ。

二十代の頃には陽キャめいたムーブを試してみたこともあるのだが、根本的に向いていなかった。

お外はつらい。目にする人々の悉くが輝いて見える。

まるで「うちらはこの世界を闊歩しても良い側の人間です」と主張しているように思えて居たたまれない。

万人に見下されているように感じる。

「すんません。僕みたいなゴミが外なんか歩いちゃってすんません」と謝りたくなる。

原因は分かってる。自意識過剰が過ぎるんだ。「なりたかった自分」が「なれなかった自分」を見下している。

僕にとって部屋の外っていうのは「なりたかった自分」の領域だから、「なれなかった自分」に居場所はないんだよ。

この認識に問題があることは重々分かっているのだけれども、どうにかできる気がしない。

外出中、目にする人々に、なりたかった自分の面影を見てしまう。

「なぜ僕は、ああなれなかったのか」と、妬心が疼く。

すると相手が僕の声を使って「よう、負け組」と嘲笑してくるわけさ。

これじゃまるで統合失調じゃないか。まあ、似たようなものかも知れないけどね。

できることなら、自信を持ちたい。世界は僕のものだと言わんばかりに我が物顔で外を歩きたい。

……と、心のどこかでは思いながらも、シンプルに向いていないとも思う。

そんなありようは、僕らしくない。

妬心に耐えながら惨めに地を這うさまにこそ、僕の“らしさ”があるとも思ってる。

であれば、やはりもう少し外には出て行くべきなんだろうな。

外に出る方が惨めになれるだろうから。

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