凡人が面白いゲームをつくるには。


偉そうなタイトルを付けちゃいましたが、凡人とは僕のことですよ。僕ぐらいのレベルの者にだって分かることは幾らかあるのです。昔々、とあるエロゲーのディレクターが「俺は俺が抜けるものを作るだけだ。そうすれば、少なくとも俺と同じ性癖を持つ奴には受ける」と言っていました。これは真理だと思います。自分だけが持つ性癖なんてそうないでしょうから、自分に刺さる物を作りさえすれば、誰かには刺さってくれるんですよ。凡人が面白いゲームを作るには、自分の感性を信じ抜くしかありません。それができなければ誰にも刺さらなくなります。つまりですね、面白いゲームを作るには、最低でも自分一人だけは面白く感じておく必要があるのですよ(凡人の場合はね)。何度も凡人と書いているのには理由があります。天才の場合は当て嵌まらないのです。天才は、自分の中に存在しない的を狙い撃つことができるんですよ。誰にだって自分のことは分かります。自分の嗜好も良く知っているはずで、それを狙うのは比較的容易いのです。しかし、他人の的を狙うとなると、難度はおそろしく高くなる。脇フェチの人が脇フェチ向けのシナリオを描くのとは違って、スカトロの性癖を持たない人がスカトロマニア向けのシナリオを書くのは難しいのです。それをやれてしまう人がいるとしたら、天才と呼ぶしかないでしょう。あまり認めたくはないのですが、その手の天才は実在するので、相対的に僕は凡人なのです。少し話を戻します。先ほど僕は「最低でも自分一人は面白く感じておく必要がある」と書いたのですが、面白く思う人の数は多い方が良いに決まっています。関わるスタッフの大多数が面白いと感じてくれるようなら、良いゲームになると思います。だから僕は、まず注視すべきは身近なところにいる人たちの反応だと思っているのです。僕は元々ゲームプログラマーなので、後に世間からつまらないと評されるゲームが、開発の時点で既につまらなく作られていることを知っています。なんなら、つまらんと思いながら作っています。最悪、製作の場に誰一人として面白いと思っている者がいないという場合さえもあります。そんな馬鹿なと思うかも知れませんが、この世の中には決まった予算で言われた通りのゲームを作って納品することをビジネスとしている会社があります。そんな会社にとっての開発のゴールは納品であって、ゲームを沢山売ることではないので、全員がつまらんと思いながらゲームを作るような状況って実際に存在しているのですよ。そのような現場から世に出されるゲームは、当然、つまらんゲームになります。つまらないゲームを作ることを避けたいのであれば、これを逆にすれば良いと思うのですよ。つまり、皆で面白がりながら作れば良いと。最も身近な世間でありQAでもある現場の人々に理解されないゲームなど、一般に受けるわけがないのですから。とても単純なお話ですが、この単純が難しいのです。

【追記】

天才を少し掘り下げておきます。面倒なので天才という言葉を使ったのですが、あまりにも大雑把ですからね。このエントリで言う「他人の的を射る人」というのは、「おまえら、こういうのが好きなんだろ?」と言いながら餌を撒くような人のことを言います。随分と人を舐めた行いのように思われるかも知れませんが、上手い人はこれで大勢を釣ります。

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