みんなに木偶の坊と呼ばれ褒められもせず苦にもされない童貞のような。そういう者に、僕はなりたくなかった。願いを持たない人は背伸びをしない。そればかりか言葉を繰ろうともしない。生きるってのは分不相応を求めて足掻くさまのことを言うのだろうにな。願いは叶わなくとも、あるだけで良いのだ。手の届かぬ物を欲しても良いのだ。身の丈など知ったところで良いことはない。「分相応」というラベルが貼られた檻に自分を閉じ込めることになるだけだ。積極的に挫折すればいい。持てる限り失っていけばいい。仕舞いには命まで失うハメになるかも知れんが、何もしないよりは死ぬ方がまだ良い。
……みたいなことを書いてしまったりするから僕は自分さえも信用できないんだよね。こないだまでは「身の丈を知れ」と書いてたもんな。