僕も人のこと言えねえんだけどさ。


僕の知り合いでも歳とっていきなり大賢者にでもなったかのような振る舞いをはじめる奴が増えとる。

なかには度が過ぎて「あいつは狂人になった」みたいなことを言われちゃってる奴もいる。

なんだかなあと思いながら自分の言動を振り返ってみると、どうやら僕にもその節がある。

ただ歳とっただけなのに、この世の全てを知り尽くしたかの如く偉そうなことを宣ってしまう。

そういう病気でもあんのかな。

おそらくだけど、僕らは歳をとって賢くなったのではなく、逆に知的謙虚さを失っている。

柔軟に物事と対峙することができなくなった自分を、有り物の知識だとか正論を使って誤魔化している。

間違いを指摘されることを恐れて、誰もが正しいと知っていることを、あえて正しいと言いたがってしまう。

たとえば僕が「うんこを食べてはいけません」と言ったとするわな。

そりゃそうだと誰もが思うだろうけど、そんなもん、あえて耳を貸すような話じゃないだろ?

反論を恐れるおっさんが、「あんたは正しい」の言葉欲しさに、誰にも新しい知見をもたらさない主張を繰り出しているだけのこと。

たとえ間違っていても「うんこは食べ物」とでも言っとく方が、まだ面白くなりうるし建設的だとは思わないか?

賢者ぶろうとしてる奴なんかよりも、間違ったことを言って怒られて反省できる人の方が知的だと思う。

自分が完成された存在であると信じたり誇ったりする奴は、例外なく頭が悪いとも思う。

せめて、いい歳こいても知らないことが山ほどあるってことぐらいは認められるようでなきゃ話にならんよ。

無知を晒せる余裕を持っていたいものだね。

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